なぜ争族になるのか

遺産分割に関わって思うことがある。

不幸にしてもめる家族には次のいずれかがあるようだ

A 一部の人が得をして不公平だ(一部の人には得をさせたくない)
B 自分の自由になるお金が欲しい
C 会社(農地)を残したいと思う親の気持ちが分からない

A(不公平がイヤ)は、他の兄弟に内緒で財産をもらったりするなど明らかな不公平のケースもあるが、ほとんどのケースは最期を面倒をみた人がきちんとした説明をしていないことから疑心暗鬼が広がり、当人同士では話が進まなくなったことが多いようだ。

B(相続財産もお金!)は、世知辛い世の中を受けて多くなっている。貰えるものはちゃんと貰わなければである。血のつながっていない家族が多くなるとこじれ始める。

C(事業承継、先祖からの財産を守る)のケースは、公平に分けるべきと考える人には全く理解できないだろう。遺産分割というよりも家業や農地、山林を後世に残そうとして遺産分割をしないというのだから。

Bの相続人はお金が欲しい。すぐにお金が欲しい人ならば代償金を払う人がいれば、早めに解決することも可能である。しかし、その人がA(公平にして欲しい)の気持ちも含まれているときには単純にはいかない。分けるべき財産が不動産だけであり、しかも売却できないときには絵に描いた餅である。計算上は資産価値が多いが、現金を手にできないのである。

これから遺産分割調停で考えていかなければならないのがCのケースであろう。
国は、農業だけではなく、中小企業の事業承継も納税猶予制度を設けている。21年度税制改正認められれば贈与する株式の評価額80%は納税猶予され、20%だけが課税対象になる。

家業を継いでいってくれる人に財産を渡すのであれば、国も応援しようというのである。
しかし、その一方で継がない人の権利をどうするのか、国は遺留分放棄の手続きも用意した。
親の意志を明確にし、相続以前に紛争の種をなくそうという。
遺言を書く習慣の乏しい日本にあってうまく定着するであろうか。

ともあれ、相続人には次のことを言っておきたい。
「相続によって損をする人はいない」

親が大きな借金を残したのであれば、相続放棄あるいは限定承認をすればよい。かつてのように親の借金を子が一生をかけて支払わなければならないようなことはない。
その結果、子供が取得するのはプラスの財産である。損をすることはないのだ。

元々、何もなかったのだが、親が財産を残してくれたからもらえることになる。

しかし、ほとんどの相続人がすでに自分たちがもらっているものと勘違いしているのだ。
親が生前に使い切って財産がなくなっていれば紛争の種もなくなっていたことをもう一度確認して欲しいものである。

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