遺産分割の評価対象は?

「遺産を評価しようということになった」と、鑑定評価を求められることがある。

しかし、ことはそんなに簡単ではない。
評価をする画地をどうとらえるか、決まっていないと価格は出せないのである。

たとえば、500坪の一戸建てと預金5千万円が相続対象としよう。
「現在も居住している長男は、そのまま住み続けたい。他の相続人は預金5千万円を取得するだけでは納得できない」というときに、長男が不動産を全部取得し、他の相続人にはそれぞれの相続分に応じた代償金を支払おう、と言うのなら、現状の一戸建てをそのまま評価すればよい。
ところが、長男には代償金を支払う余裕がない、あるいは、他の相続人のなかに不動産をどうしても欲しいという人がいるときには、500坪の土地を分割することになるだろう。
市街地の500坪であれば、マンション用地にもなるかもしれない。しかし、200坪、150坪、150坪に分割されると、いずれも戸建てか、アパートであろう。500坪まるまるを売るときの価格よりも、分割した土地3区画の価格を合計した額の方が低いことがよくあるのである。
経済合理性に反する分割ということになる。とはいえ、全てを売って分けるのでなければ、そのような分割も致し方ない。土地を分割して、相続人がそれぞれを取得するのである。
しかし、分割することが決まっても、どのように分けるか、分割線の入れ方により、奥の旗竿状の土地ができたり、それぞれの画地の価値は一様とは言えない。

したがって、分割線が引けなければ、評価の価格も求められないのである。
当事者の主張をよく整理し、合理的でかつ公平な調停案がまとまりかけてから、言い換えると、誰がどの不動産を取得するかがほぼ確定したときに評価の段階に入るのである。
すなわち、不動産の価値が確定すればすぐに現金預金の分け方や代償金の額が計算できるようになったときに、初めて評価の段階に写るのである。
それまでの段階で鑑定評価を求めても、条件が変わってしまえば、価値は大きく異なる。その結果、無駄な評価作業(無駄な鑑定評価費用)になってしまうこともままあるのである。

しっかりした鑑定士は、調停における当事者のこれまでの主張を読み、当事者に分割線を合意してもらう。その上で評価作業に取りかかる。鑑定評価の結果はそのまま当事者の遺産分割につながる。そのときに作られる鑑定評価書は当事者に対し説得力あるものにしなければならない。それが当事者にとっても、納得しやすい結果につながると鑑定士は信じているからである。

鑑定評価は、埼玉不動産鑑定所へ