「士」と「師」

弁護士、医師、—「士」「師」と付く職業は人の
不幸をタネにして儲けていく職業だ、と言われたことがある。 確かに、病気や争いごとは日常的にはないこと、不幸にも巻き込まれてしまった不幸である。普段はないことだから専門家にお願いすることになる。
慌てふためいている人の弱みにつけ込む輩がいないとも限らない。だから、いずれの職業も尊敬される反面、倫理も注目される。

最近は社会が高度化している。専門家でないとわかりにくいことが多い。だからこそ、後々、問題が生じないように、予防的に専門家の意見を求めることも多くなった。病気にならないための人間ドック、契約する前に弁護士に相談、税務申告は顧問税理士、不動産に関することは不動産鑑定士に—  担保評価、取引の前の評価、税務上の問題に関する評価、様々な目的に応じた鑑定評価があるが、いずれも将来、問題が生じないように(問題が生じても影響が少ないように)予防的に求められる鑑定評価書が多い。 鑑定評価が第三者の公正な意見を表明するものであるから、そこには評価書の中身についての適切で詳細な説明が求められる。どこに出されても説明できるように配慮した評価書でなければならない。  「鑑定評価の報酬が安かったから、簡単に評価した」  「急いでやれといわれたから、評価の手順も省略しました」 そんな言い訳は通用しない。 結果の価格が妥当であるのか、とともに、 鑑定評価の手順、手法選択の良否、専門家の判断領域が広い不動産鑑定は、その分説得力のある材料を提示しなければならないことになった。  「私がルールブックだ」 人を信頼できる、古き良き時代には通用した言葉だが、性悪説を認めざるを得ない時代の専門家は、自らを律し、説明する義務がある。  不動産に関する専門家である不動産鑑定士は、事後の説明責任を全うできるか否かで評価される時代になったのだ。
鑑定評価は(有)埼玉不動産鑑定所へ