遺産の対象

遺産分割の対象となるのは、故人が亡くなった時点の財産です。
しかし、それまでの兄弟の状況から、不公平感が表に出てくることもよくあります。

先日、相談されたケースは次のようでした。

相続人は兄と弟だけ。遺産は兄の住んでいる自宅と隣接のアパートがほとんど。
兄は自宅とアパートの土地建物について相続税評価額を知り合いの税理士に計算してもらいました。(金額が低いため相続税はかからなかったのです)その上で、総額の2分の1に見合う額を工面して弟に渡そうとしたのです。
しかし、弟は言いました。
「兄貴は親の家にずっと住み、これからも家賃がかからない。俺はアパートを借りてやってきた。兄貴はこれからも毎月アパートの家賃が入り、生活も裕福になる。」
「計算した金額でも良いが、その2分の1の額の他に、これから10年間入ってくるアパートの家賃収入から経費を引いた額の2分の1を渡して欲しい」

遺産分割が済むまでは、アパートのように収益を生むものは「果実の精算」をしなければなりません。逆に経費も精算しなければならないのです。
しかしながら、遺産分割後の不動産から生まれる収入、あるいは経費はそれぞれ取得した人が個別に対応すべきものです。利益もあるでしょうが、リスクもその取得した人が負担することになります。

弟の言う「アパートの収益の半分をよこせ」ということは、分割をせずに共有関係を続けたときは当然ですが、相続税評価額によって計算した遺産総額の2分の1を受領した後には当てはまりません。弟の言うとおりにすることはアパートの10年間分の収益の半分を渡さなければ不公平になるような、特別の生前贈与や寄与分が認められたときのことです。

個別の状況はいろいろでしょうが、10年にわたって精算をしていくのは問題を先送りしかねません。「当事者で話し合いができないときには調停をした方がよい」とアドバイスをさせてもらいました。

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