相続で後悔しないように (19)

③家族で揉めないだろうか

【母親の介護と相続は別の問題】

残された母を誰が介護するのか、高齢化社会になると大変切実な問題です。

老人が老人を介護するのも当たり前の時代です。

母親を長女が介護する代わりに、父親の遺産の半分にあたるアパートを長女が取得、自宅は母親、残りの財産を他の兄弟が分けるという事例がありました。

やがて、数年後、母親は施設に入りました。施設の利用料などは母親の年金で充分でした。

母親が亡くなりました。

遺産分割の話題になると
「私は母親の面倒を見たから寄与分を主張します」
「姉さんは母の面倒を見たわけではない。ただ、施設に登録した身元引受人になっただけ。父親の時に約束したことからすれば、おかしいわ。父親の相続の時にとりすぎなのよ」
「そうだ。特別養護老人ホームの施設料は年金でまかなっていたし、ホームに入るまで母さんはしっかりしていた。自分で銀行にも行き、料理も選択も一人でやっていた。姉さんはおやつの時に世間話ししていただけじゃないか」
「父の時に姉さんがもらったアパートから得た家賃も分けて欲しいくらいだ」
当の姉は
「あたしは、父も母も一緒に住み世話をしてきました。そのため勤めもしないから収入もありません。自分の生活を続けるためにもアパートと自宅は必要なんです。一流企業や公務員であったあなたたちとは違って年金もないんです。」

親の介護は兄弟姉妹、親から見れば子どもたち全員の責任です。
必要な介護費用を計算してそれぞれが分担する方法も考えられるのです。
遺産分割と切り離して考え、介護の負担は後で精算する、と約束しておいた方が良かったのかとも言えます。

親の介護に人生を翻弄された、という姉。
収入、資産のない姉の生活をどうするか、
遺産分割の直接的な問題ではないところに、解決がむずかしいことでもあります。l

2012/5/26
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