相続で後悔しないように (24)

⑤そもそも どうしたらよいか分からず、ただ不安

お葬式は誰のために行うのでしょうか。

相続税の計算上、通常の葬儀費用は控除されます。

しかし、遺産分割の計算するときに、葬儀にかかる費用を当然に差し引くわけではありません。

遺産の計算時期は相続発生時=本人の死亡したときですが、葬儀費用は亡くなった後にかかる費用であるから、被相続人本人の債務とは言えないからです。

そうは言っても、葬儀費用を遺産総額から引くことに相続人の多くは認めています。
たいていの場合、葬儀費用の負担は家族(法定相続人)が分担することが多いため、遺産から引いても、各自が分担しても、あまり変わらないからです。

ところが、そう単純に言えないこともあります。

そもそも、お葬式は誰のために行うものでしょうか。
(故人の側)
①本人が本人の成仏、あるいは世間へのお礼などの挨拶等のために行うもの(生前葬が典型)

(遺族の側)
②遺族が、故人のために行うもの(故人の功績を称える、感謝する)
③遺族から故人に対し お別れをする(遺族の気持ちを整理する)
④遺族の一人あるいは複数が個人の事業を継承する 継承者の紹介 (社葬など)

(世間の側)
⑤故人に対し周囲の人々が最後のお別れをする
⑥遺族に対する慰めをする機会
⑦遺族に対する葬儀費用の共済
⑧地域の忌みごと(穢れ)を清める

実際には、色々な意味が込められていると思います。
お葬式を家族など内輪だけで行い、後で知ったときには、
「お線香をあげに行きたいのだが、どこへ行けばいいのか」
「世話になった人の最期はどうだったのか、苦しまなかったのだろうか、教えて欲しい」
「」自分の父の時に来ていただいたのだから、行かないというわけにはいかない。なぜ葬儀の日程を教えてくれなかったのか」等々、周囲の人間には家族の想像もできないつきあいがあります。
また、関係する方が葬儀の時に揃って来ていただけるから、遺族の負担もそのときだけで終わるとも言えます。亡くなった後、多くの方が時を待たず、弔問に来られて応対するのも大変な負担です。通夜~葬儀~出棺~荼毘~納骨~行政機関や銀行等への手続きなど、やるべきことがたくさん続くことも一時だから、忙しさに追われて悲しみにうちひしがれる暇もなくなる効果があります。そうしたことがないと、ただただ故人のことを思い、暗い気持ちの毎日が続いてしまいます。

その一方、葬儀はしたものの、葬儀を一部の相続人が取り仕切り、他の相続人には何も相談しないことがあります。さらに、香典等の収入は明らかにせず、費用の分担を請求して、争いがこじれているケースもあります。

葬儀は、誰か一人のためのものではないのです。

故人の成仏と、残された遺族、また周辺の人々にとって故人との区切りを付ける儀式であることは間違いないでしょう。幸せになるために行うものであって、紛争の引き金になることであってはいけないのです。

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