中古住宅流通に鑑定士も注目しなければ

国土交通省は流通市場を何とかしようと躍起になっている。

不動産取引価格はネット検索によって加工された情報ではあるが、公開されている

さらに、国土交通省も「流通市場活性化フォーラム」から「流通市場における情報整備のあり方研究会」に段階が進んだ。これに呼応する
かのように日経新聞の社説に中古住宅のことが記された。中古住宅の取引活性化は待ったなしだ(2012/8/2日経社説)

社説の中でも強調されているのが、
「トラブルを減らすためには施工後に問題が発覚したら、業者がしっかり保証する制度がいる。第三者が建物を客観的に検査する仕組みを広げる必要もある」としている。

このまま鑑定業界が何もしないでいると、建物検査をするインスペクション(住宅診断)業者が表に出て流通価格をリードすることになりかねない。建物の質の判断もさることながら、その建物が土地と一体的になりどれだけの価値を持つのかを判断するのは、不動産鑑定士の本来の仕事である。

ところが、インスペクション業者は、不動産流通会社の子会社や、建築事務所、あるいはリフォーム会社など、それぞれが動き出し、横の繋がりを持った業界団体がない。そのためもあって、建物診断をする項目や基準など、標準的なものがないらしい。

このまま進んだ場合には、一般消費者にはどの業者が良いのか、そして物件のどこを信用して良いのかなど、判断できない混乱が生じるだろう。

今、鑑定士協会連合会が行うべきは、
「中古住宅流通に対して、鑑定業界も全面的に協力して進める。そのために不動産価格調査について鑑定業界と両輪をなす一方であるインスペクション業者の実務標準化(団体窓口の整備)を国交省として推進することが望ましい」とする提言であろう。

不完全な建物診断を基にした鑑定価格では信頼されなくなってしまう。
新しい仕組みを作るときには、「とりあえず動き出す」のではなく、考えられる十分な制度設計をしておくべきだろう。

鑑定評価は(有)埼玉不動産鑑定所へ